愛山の講談私小説シリーズ アル中の種(10)

 

アル中の種

 

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 寒さを感じる季節になった。オイルショックが騒がれている。街中で南こ
うせつとかぐや姫の「神田川」が聞こえてこない日はない。
 高校で同級の丸尾が上京してきた。受験の下見のためだ。
 丸尾は地元の製粉工場で働き、短大の二部に通っていたが、これからは東
京の大学で社会福祉を学ぶのだという。わたしの学校も丸尾の志望校に入っ
ていた。寝耳に水の話だった。
 この男もおれを出し抜こうというのか……。
 わたしは唇を噛んだ。人生のマラソンのドン尻を走っていることは意識し
ていたが、脱落者だけにはなりたくなかった。レースにしがみついていたか
った。          
 久しぶりに中川も誘い、新宿の赤提灯で三人で酒を飲んだ。丸尾の食べ物
をこぼす癖は変わっていない。すこし酔った……。
「おまえは一体何をしてるんだ。この前親父さんから電話があったぞ。あれ
が何を考えているのか教えてくれってさ。オレ、困ったよ」
「……」
 父親の神経質な顔が目先にちらついた。
 ー彼らの前でこれ以上不様な姿は見せられないー。
 わたしは体内から熱く噴き上げてくるものを感じた。もはや行動をおこす
以外にない。ずいぶん長い道のりだったー。
 …………
  …………
 

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