愛山の講談私小説シリーズ アル中の種(8)

 

アル中の種

 

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 叔父と道で擦れ違った。非難の目を向けてくる。わたしに関する情報が父
親から届いているのだろう。叔父とふだんの行き来はないが、針の筵に座ら
されているような気分だ。
 わたしは高校の先輩の安西を頼り、中野に移り住んだ。安西と共に両手に
荷物を提げ、バスと電車を乗り継いで、二往復の引っ越しだった。
 安西は築地で働きながら絵を描き、演劇活動を続けている。気楽な生活の
ようだが、人生を気楽に考えている男ではなかった。
 駅から歩いて十五分。中野警察学校のそばにある築三十年の木造アパート
は、汲み取り便所も流しも共同で、畳は傾いていたが、わたしには新天地だ。
親しい先輩との同居が始まる。
 しかし環境が変われば気分も変わるだろうという、わたしの読みは甘かっ
た。わたしは不甲斐ない生活に、ますます自責の念に襲われ、身が悶えた。
 わたしは下落合に転居した中川のアパートを訪れて酒を飲むことだけを楽
しみに、方針が定まらず、心の整理のつかぬまま、翌年四月に復学した。

 ー中川が英会話学院を退めた。
 安西の紹介で始めた築地のアルバイトで資金を貯め、アメリカへ渡るのだ
という。
 中川の眼に光がもどった。
 わたしは敗北感を味わい、罪悪感にも苛まれた。大学に復学しても授業に
は出席せず、相変わらずの寄席通いで、このままでは留年は間違いない。一
体どうしたらいいのか……。
 …………
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