愛山の講談私小説シリーズ 母の最期(15)
母の最期
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ー弔意を告げるメッセージが何本も留守番電話に残されていた。パソコン にもメールが届いている。 わたしは東京のアパートに戻ると折り畳みの小テーブルを取り出して部屋の 隅に置き、空き箱の蓋を引きちぎって母親の戒名を書いた。そして残り物の菓 子を置き、水を入れた湯飲み茶碗を用意すると、たちまちのうちに手作りの仏 壇ができあがった。 母親の写真が一枚もないことに気がついたが、四十九日で帰郷した時に持ち 帰ればいいだろう。 「ちょっと淋しいけどさ。当分はこれで我慢しなね」 わたしは母親の口真似をしてダンボールの位牌に語りかけた……。 母親の死後初めて稽古に現れた陽平が、「貰い物ですけど、お供物のつもり です」と言って蜜柑の缶詰を二つ仏壇に上げた。一瞬、わたしの脳裏に「みか んの花咲く丘」のメロディーがよぎった。 陽平は両手を合わせると、「あの、兄さん、蜜柑……あまったら返してくだ さい」と言った……。 (了)
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